こんにちは、気仙沼復興豆腐の店主 千葉淳也(ちばじゅんや)です。

 当店は明治28年創業、私で5代目になります。平成23年3月の大津波で自宅兼工場が全て流出しましたが8ヵ月後の同年11月に多くの方々のご支援を受けて現在の場所に本格営業再開をとげることができました。震災を機に代替わりして現在は両親と3人で毎朝早くから製造しています。また、新たな試みとして薪を燃料とした地釜で製造する本格手作り豆腐に挑戦し、その名を「復興豆腐」としました。手間はかかりますが大豆の香ばしさを充分に引き出すという意味ではこれ以上ない極みの製法だと思っています。

 徹底した美味さへの研究心と、移動販売での長年のお付き合いで培われた「地元のお客様との信頼関係」には強い誇りを持っております。

 被災時の避難生活では「自然への畏敬の念」と「先人の知恵の素晴らしさ」に感じ入りました。自然は人間にとって恐ろしい面がある一方で豊かな恵みを与えてくれる存在でもあるのです。私はたとえ一人の小さな力だとしても、豊かな自然環境を後世に残すための行動を始めることに決めました。

 荒れ果てた里山に入り枯れた木や山林資源(竹など)を利用して毎朝の豆腐作りや日々の生活に利用する取り組みをしています。すべて人力での作業なので所有する山林すべてに手が回るのに何年かかるか分かりません。あるいは一生かけても終わらないかもしれません。自然は常に変化しているからです。でもそれが古来からずっと続いてきた自然と人間との関わり合いの形だと思っています。

 数十年か数百年先あるいは千年先になるか分かりませんが災害は再びこの地に起こります。私は願わくばそのような状況になったとしても、私たちの子孫が自然環境とうまく付き合っていけるだけの環境を整えてあげたいと思うのです。そのための小さなアクションを起こす事こそ、この大震災を経験した私なりに導きだした教訓なのです。